発掘調査の現場

 前回は、日本における発掘調査の現状を紹介しました。現在では主に、「開発工事に先立つ行政措置」としての発掘調査が実施されています。日本全国の教育委員会の管轄にある埋蔵文化財センターの指導の下で、行われています。出土品の保存・管理を行っているのはもちろんですが、太古の昔から近世に至るまでの地域ごとの情報を統括するなど、様々な活動を行っています。今回は、開発工事に先立つ行政措置としての発掘調査が行われる場合の、実際の作業手順をメインに紹介します。

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届出

 開発工事を行う際には、まず市町村の機関へ届け出をする必要があります。

そして、埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうかを遺跡地図などで確認されます。

その結果、該当する場合には、文化財保護法に基づいて工事に着手する60日前までに市町村を通して都道府県に届出をしなければなりません。(『文化財保護法』第93条の規定)

 なお、埋蔵文化財包蔵地に該当しない場合は、そのまま工事を施工してもよい事になります。

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作業手順

  事務手続きを終えましたら、実際の発掘作業に移ります。

作業手順としては、まず試掘調査を行った後に、本格的な発掘調査へと入ります。

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試掘調査

 まず試掘調査です。

開発する土地が埋蔵文化財包蔵地と定められていた場合でも、実際に地下の様子を調べたわけではありません。  本当に地下に埋蔵文化財があるかどうか、どの範囲に、どのくらいの深さで、どのような埋蔵文化財があるのかを前もって把握する作業が必要になってきます。この作業が試掘調査です。

 作業は、バックホウなどの機械や人力で試掘溝を掘り、丹念に地下のようすを調べます。試掘溝は全体の面積の約5~10%を目安とし、そこから全体を推定することになります。

 試掘調査によって発見された品々は整理を行います。洗浄、復元、保存処理、実測、トレース、写真撮影、報告書の作成など、発掘の基本的な流れです。これらは後で詳細を述べます。

 試掘調査で得られた情報は、本格的な発掘調査を実施する場合の基礎資料となります。

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発掘調査

 本格的な発掘調査は次の手順で進められます。

表土の除去では、試掘調査のデータをもとに調査範囲が決まり、重機によって表土を取り除きます。

遺構の検出では、遺跡が残っている面まで手作業で掘り下げます。

遺構の掘り下げでは、土の色や質の違いから建物跡や溝などを見つけます。

測量・記録では、遺構の形や遺物の出土状況などを測量し、写真に記録します。

遺構の完掘では、遺構の中の土を掘り下げ、遺物を取り上げるとともに最終的な記録や測量を行います。

表土の埋め戻しでは、重機により表土などを埋め戻します。

 このような現場での作業が終了すると、今度は出土品の 整理作業へ移ります。

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遺物の保全

  整理作業の手順は次の通りです。

①遺物の洗浄・注記

屋外作業で出土した遺物を丁寧に水洗い、乾燥させます。土器片は、形や色・厚みなどで分類した後「どこで、いつ出土したか」わかるように略号で記入します。

②接合・復元

離れ離れになった土器片を見つけて接着剤で接合します。土器片の足りない部分は石膏などの補強材で補い、着色して仕上げます。

③遺物の保存処理

出土品のうち、脆弱な木製品や金属製品などには化学的な処理を施します。

④実測

土器の形や大きさ、文様などを正確に測り、実測図を作成します。

⑤製図(トレース)

遺物だけではなく遺構の測量図も併せて製図を行います。最近ではパソコンを使ったデジタルトレースも行います。

⑥写真撮影

遺物を写真に撮ります。また屋外で撮った遺構写真も順次整理します。

⑦報告書の刊行

これまでに得られた成果を図面や写真を交えて分析・研究を行い文章にとりまとめて、発掘調査報告書として刊行します。

⑧収蔵・保管

出土した遺物は整理し、収蔵庫に保管します。

⑨展示・公開

整理作業が終了した遺物や得られた成果は、展示室で展示・公開されます。報告書は全国の埋蔵文化財調査機関や図書館などに配布し、調査成果を広く公開します。

 このような流れで、実際の発掘現場は動いているようです。自治体の教育委員会の埋蔵文化財保護の部署が主体となって行っていますが、実務は民間の発掘調査会社に任せるケースが多いようです。

発掘調査会社は東証一部上場企業や、中小企業まで様々です。

 福井県の丸山古墳(卑弥呼の墓)の発掘を目指して調べたところ、2020年時点で発掘調査会社の出張所の多くが福井県にありました。2023年の北陸新幹線延伸の工事があるので、需要が多いようです。