現 状

 ここでは発掘調査の現状を記します。

遺跡の調査に決まった形はありませんが、大きく二通りに分けられます。

 

1.学術研究目的の発掘調査

2.開発工事に先立つ行政措置

 

1980年頃までは、学術研究目的の割合が大きかったのですが、その後の民間・公共の大規模開発事業に伴って実施されてきた発掘調査は膨大なものとなり、現在では95%以上が「2.」となっています。

 

1.学術研究目的の発掘調査

 

現在では、大学と行政機関との共同研究に収斂されてきているようですが、かつては一般的な発掘形態でした。

 

大学が主体的に発掘場所を選んで、学術調査する

 発掘資金を大学自らが捻出して、調査を行っていました。実習目的という名のもとに、学生をタダ働きさせて進める古い方法がまかり通っていました。今でも、この悪習は少なからず残っているようですが、現在では発掘調査会社に依頼するのが普通です。ただし昨今の研究費削減の波を受けて、それも減少しているようです。

開発工事で破壊される前に、郷土史家が大学へ緊急調査依頼する

法整備が整っていない時代には、乱雑な大規模開発で埋蔵品が失われていました。埋蔵文化財への意識の高い郷土史家などが声を上げて、人脈のある大学へ依頼して行われる事もよくあったようです。

個人の興味から発掘調査する

郷土史家などが埋蔵場所に当たりを付け、行政機関に働きかけて発掘調査したり、私財を投じて発掘調査していたケースもありました。

 

 これらの発掘の問題点は、出土品の保全・管理です。良好な状態に保つという意味合いだけでなく、出土品の所有権の問題もありました。大学や個人の所有となったり、貴重な品々が散逸してしまったケースもありました。

 

 現在では法整備が進んで、常に埋蔵文化財保護センターのような行政機関と一体となって、発掘調査が行われていますので、こういう問題は少なくなりました。

 

 なお、発掘調査時の環境整備や出土品の鑑定などにおいても不安定要素が多かったので、発掘者としての的確性を判断する資格制度を設けています。

 民間資格ではありますが、 「埋蔵文化財調査士」「埋蔵文化財調査士補」などがあります。

国家資格として更に整備してもらいたいものです。

 

 

2.開発工事に先立つ行政措置

 

現在は、「文化財保護法」の規定により、周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事などの開発事業を行う場合、建築会社は都道府県や政令指定都市などの教育委員会に事前の届出が必要になります。

 

また、新たな遺跡や埋蔵文化財を発見した場合にも届出の義務が発生します。

ただし、都道府県や政令指定都市などの教育委員会でも開発予定地が周知の埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうかの判断がつかない場合は、自治体の職員が現地踏査や試掘を行う場合もあります。

特に、すでに埋蔵文化財が出土している地域の隣地などの場合は、こういった手続きが行われることがあります。

 

また、実際に遺跡や文化財が出土した場合は、都道府県や政令指定都市などの教育委員会が埋蔵地の処遇を決定します。

より重要な文化財と認められる場合には、発掘者は現状を変更せずに文化庁長官に届出を行います。

 

 

 

 

 2-1.公共(自治体・国)が主体

 

 2-2.民間が主体