ヤマタノオロチ伝説

 古事記には、「高志之八俣遠呂智、年毎に来たり」と記されています。古代日本の地方である高志(こし=越)から毎年、出雲に現れます。8つの頭と8本の尾を持った巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまう。

 

と描かれています。この怪物を、高天原を追放された須佐之男命(スサノオノミコト)が退治します。戦いの中で、ヤマタノオロチの尾を切ると、自らの剣(銅剣?)が欠け、鉄剣が現れました。その鉄剣は、天皇家に現代でも受け継がれている三種の神器の一つ「草那芸之大刀」です。またスサノオノミコトは、ちゃっかりと出雲の娘を嫁にもらいます。

ヤマタノオロチ
ヤマタノオロチは、高志(越)が出雲を支配していた証である。[邪馬台国]

 

 怪物のたとえ話にしていますが、要約すると、

1.出雲は高志(越前)に支配されていた。

2.越前の軍勢は、毎年一回の収穫期に出雲に現れ、租庸調を搾取して行った。

3.疲弊した出雲に援軍(スサノオノミコト)がやって来た。

4.銅剣で戦った援軍だったが、鉄剣を持つ越前から勝利した。

5.援軍は戦利品として、鉄の技術と、出雲の権益を取得した。

 ということでしょう。

 

 また、「高志之八俣遠呂智」の記述に重要なヒントが隠されています。

越の邪馬台のおろち、つまり越前には邪馬台という恐ろしい国があったことを示唆しており、出雲まで支配していた事を示しています。はっきりと越前の邪馬台国と記述しなかったのは、継体天皇の出身地である越前に対する忖度でしょう。

 

 援軍(スサノオノミコト)は、高天原からやって来ていますが、おそらく九州か瀬戸内勢力と思われます。それは、古事記に、これらの地方が天皇家のルーツであるかのような記述がなされているからです。(神武東遷など)

 古事記を編纂した飛鳥時代は、藤原氏が実権を握っていたので、藤原一族の母体である九州・瀬戸内を正義の味方として描いたのです。政敵の蘇我一族の母体である高志を、悪者にする意図もあったのでしょう。

 

 なお、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した後、高志(越前)まで勢力を伸ばした記述はありません。これは、戦いの後の和解で、越前(邪馬台国)、出雲、九州、瀬戸内が連合したことを示唆しています。後に、越前の継体天皇が近畿に侵攻する際に、出雲、九州などのバックアップを受けていた事と、整合性がとれます。

 

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