現代の中国が、一つの国家であることから生ずる誤解です。
魏志倭人伝が、いくらでも曲解されてしまう理由の一つです。
魏志倭人伝は、何語で書かれていたのでしょうか?
という問いに、
「古代中国語に決まっているだろ!」
と答えるでしょう。もちろん、間違いではありません。
では、ローマ帝国の歴史書は、何語で書かれていたのでしょうか?
「古代ヨーロッパ語に決まっているだろ!」
と答えますか?もちろん間違いではありません。
しかし、なんか変ですよね。
中国は、ヨーロッパ以上に多言語・多民族国家ですので、主要言語だけでも十種類以上あります。そして、それらの方言や、少数民族言語を入れると無数にあります。
また、魏志倭人伝が書かれた三世紀の、中国中心部で使われていた古代中国語は、古代北京語ではありません。さらに、現代の洛陽や西安(長安)で使われている言語でもありません。
ただし、文字は「漢字」という表意文字なので、文法の違いも、発音の違いも、どの中国言語も包含されてしまうのです。
古代中国語の末裔は、「客家語」(はっかご)と言われています。北京語や上海語とは、文法も発音も全く違います。
魏志倭人伝を本当に理解するならば、1800年前の客家語を理解しなければなりません。ほとんど不可能な話です。ですので、様々な曲解がまかり通るもの無理はありません。
客家人という民族は、黄河文明以来、中国の歴史を作ってきた優秀な民族です。勤勉で団結力があり、日本人が手本にしてきた古代中国人そのものです。
この民族は、十世紀頃に他の民族によって、中原を追い出されました。各地で厄介者扱いされ、迫害を受けた流浪の民です。客家という呼び名自体、嫌味を込めた言い方らしいです。
また、世界中に散らばった華僑の半数は、この客家人だそうです。なんだか、ユダヤ人に似ていますね。
客家人は、現在の人口は一千万人ほどで、中国全体の1%にも満たないのですが、鄧小平や、シンガポール建国の父・リークワンユーなど、著名人を多く輩出しています。
客家人の研究だけでも、一生かけても無理な複雑な民族です。